二十年ほど前の話。
小学校にあがったりばかりの頃、近所のピアノ教室でちょっと頭角を現した私は都会の有名な先生に習うことになり
バスで15分程の距離を毎週通うことになった。
ある日、先生に言われた事が理解できずにくやしくて、帰りのバスで頭がぐるぐるしたまま寝落ちしてしまった。
目が覚めたら知らない風景。どれぐらい遠くに来てしまったんだろう?
これ以上家から離れたらダメだ!ととっさに思い、手提げをつかんで次の停留所で降りようとした。
当時はパンチ式のバスカードで、機械に通すと残額は足りたけど
残り数十円と表示されて、逆向きのバスに乗るには足りない・・・
日も暮れてくるし、お腹もすくし、不安でいっぱいだった。
レッスンで先生に厳しくされたし、バスは寝過ごすしで、情けなくて、お母さんは探してるかな?ちゃんと一人で帰れなくて、私はダメな子だと思ったら涙が出てきた。
降りた停留所は大きい道路沿いで、どうしたらいいか分からないまま、泣きながら歩き始め、気がつけば住宅地をさまよっていた。
人通りが全然なく、でも傍の家からは団欒の気配がして、よけいに寂しくて泣いた。
本日のピックアップ(=゚ω゚)ノ
いい加減歩くのも泣くのも疲れてきて、夜になってきた頃、声を掛けられた。
「どうしたの?」
制服のお姉さんだった。中学生か、高校生か、分からない。暗くて顔も見えなかったけど、優しい声だ。
泣きすぎて頭がパーになって、ピアノに行ってて、バスが、先生が、とか、支離滅裂な事を言ったと思う。
お姉さんは、泣いてる理由と、降りるべきだった停留所を根気よく聞き出してくれた。
「よし行こうか!」そう言って、お姉さんは手をつないでくれた。そして「泣かないで~」とか「強い子だね~」とか言いながら、反対路線の停留所まで連れて行ってくれた。
私がお礼を言い出せないまま、バス代の小銭をくれて、
「ピアノがんばってね!」と言うと私を反対路線のバスに乗せて、窓の外から手を振った。
お姉さんとはそれきりです。顔も名前も分からない。
お姉さん、あの時は本当にありがとう。
根性も才能もなくてピアニストにはなれなかったけど、今も泣かずに強く生きてます。
武勇伝じゃねえし
いい人スレにどうぞ
この記事へのコメント
お兄さんだったら捕まってたな(笑)そもそもピアノに限らないけど大体の習い事は独学でできるから教室行ってる時点でな